この記事ではOM-ソーラーハウスでの室温等のデータを実測し、太陽からのエネルギーが実際の生活にどのように使われているのかを計測、考察していきます。四季折々での生活のなかで実際に太陽のエネルギーや自然エネルギーを実際に利用し、可能な限り計測して、その恩恵を理解しようという試みです。自然エネルギーを生活に取り入れることを考えている方、これからの住まいを検討している方などの参考になれば幸いです。
条件と暖房の仕組み
今回は冬の一日の様子を計測した結果を発信していきます。長野県の冬は結構寒く、その中で太陽エネルギーがどれだけ活躍できるかをデータで見ていきたいと思います。前回の記事でも書きましたが、計測地点の基本情報を再掲しておきます。OMソーラーハウスの原理等は、前回 https://ko-tetsu.com/omsolar_live/ の記事を見てください。
所在地 | 長野県佐久市 |
緯度経度 | 36°14’55.9″N 138°28’36.6″E |
年平均気温 | 10.9度(2022年) |
年間日照時間 | 2146.9時間(2022年) (日本の中央値で2000時間程度) |
下図はOMソーラーのHPにある暖房の仕組みです。まず、集熱パネルと呼ばれる屋根の部分が太陽の輻射熱を吸収して温度があがります。集熱パネルの下には空気の通路が設置されていて外気を取り込んでいます。取り込まれた外気は集熱パネルの熱で温められ(あとでデータ示しますが、集熱面は相当高温になる)ダクトを経由して床下に送り込まれます。①の部分は集熱パネルと言われ、屋根のかなりの面積を占めています。この屋根の下に狭い空気の通路があり、外気がそこを通って④のファンに達するまでに相当温められます。集熱パネルの温度はあとにも出てきますが、天気が良ければ冬でも80℃を超えることがあり、相当高温になります。これは前にも述べましたが、太陽の放射温度が6000℃に近いために見られる現象で、輻射による伝熱の事例です。温められた空気は④のファンによってダクトを通って床下(②)に送り込まれ、床下を温める(③)ほか、家の中に配置されたガラリを通して部屋の中に出てきます。私の家の場合、ファンの全体風量は720m3/h程度、各床吹出口の風速は0.8m/s程度に設計されているとのことでした。ガラリに手を当てると、ほんわか暖かい空気がでてくるのがわかります。以降で実際の計測とデータを見ていきます。
計測方法
備えつけのコントローラー
今回はOMの家に備えられているリモコンに表示される情報と追加のセンサーを用いて計測しました。リモコンには室温、外気温度、棟温(屋根の集熱パネルの温度)、お湯の温度などが表示され、自動/手動、季節ごとの運転モードの変更などの制御も行うことができます。下にリモコンの写真を示します。
追加センサー
今回はこのコントローラーの他にInkbird社(https://inkbird.com/)というところの温湿度センサーを購入して自動でのデータ収集も行いました。手のひらに収まるサイズの軽いもので、内臓温湿度計と、外付けの温度プローブが付属しており、データの収集はスマホに入れたアプリからBluetoothで行うものです。最近ではこのようなセンサーもごく安価で買えるようになり、非常に簡単にデータを集められるようになりました。温湿度計測の専門家の知人の話ですと、結構精度もよく、実用に耐えるものもあるようです。ただ、内臓の温度計とプローブの温度計の誤差(わずかだが、主として筐体内の機器の発熱がこもることによる温度上昇)はみておいてあほうがよさそうとのことでした。これについては別途発信したいと思います。
こちらが今回計測に使用した温湿度センサーの写真です。
このInkbirdという温湿度計の使い方などは下の記事 https://yonsyokudango.com/thermo-hygrometer/ を参考にしました。スマホにアプリを入れるとbluetoothでデータを自動で受信します。ある程度内部にためて置けるので、外出して帰ってきてから受信しても十分です。uploadしたデータはスマホからメール等でPCにCSV形式で送れますので、簡単に分析することができます。余談ですが、こういったセンシングはセンサーの点数が多くなると、センサーの電源の問題もさることながら、データ収集方法も問題になってきますが、ある程度小規模ならばこの方法は非常に合理的だと思います。
測定点
下図はOMソーラーのHPにある暖房の仕組みです。この①~④のポイントを基本に温度データを取ってゆきます。①を集熱面(棟温)、②をダクト近傍床下、③を室内として計測しました。④は換気なので特に計測はしていませんが、その代わりに外気の温度を計測しています。棟温と外気の温度は備え付けのリモコンの表示を直読してデータとしています。
私の家のOMは最新型ではないので、このようなリモコンの表示データを外部に取り出しできません。最近では「エコナビOM」というものがあるようで、WEBサイトやスマホで、温度データや運転状況を確認したり、USBでデータを出力する機能があるようです。「そんなデータをとってどうするんだ」という声も聞こえてきそうですが、このような自然エネルギーの家に住んでみるとほしくなってくる機能かもしれません。
測定結果
測定結果は以下のようになりました。2023年の3月4日の朝6時から翌日の朝6時まで、24時間のデータになります。
点で示されているのが、リモコンから直読したデータです。日中は30分間隔で取ってますが夜間はだいぶ間引きました。黄色が外気温度、灰色が集熱パネルの温度(棟温)になります。また、連続のデータはセンサーの計測データで、オレンジ色が床下温度、青が室内温度です。
外気温度が-5℃~18℃くらい変化してますが、室温は17℃~22℃程度で比較的安定してます。しかも寒さを感じる夜間でも安定して20℃以上をキープしているのがうれしい点です。これはOMソーラーが床下にコンクリートのたたきを持っていて、その熱容量で蓄熱しているためです。当日はよく晴れていたので、集熱パネル(棟温)の温度は冬にもかかわらず80℃近くまで上昇しています。これがいわゆる太陽輻射からの熱エネルギーによるもので、晴れた昼間はかなり劇的に上昇します。オレンジの線を見ると、床下の温度も棟温の上昇に伴って同様に上昇し、37~38℃くらいまでいったところで、ほぼ平坦になっています。これは室温の設定を21℃にしてあったため、それ以上の熱はお湯を作るほうに回されたためです。7時~16時くらいの室温と床下温度の差分が台形的に見えてます。この部分のエネルギーは床下に蓄熱され、夜間、集熱面の温度が下がり、外気温が下がったときに、床下の蓄熱部分から熱を放出して、床下と室温を一定の温度に保つ働きをしています。
図中で22時~0時の間で床下温度が一時的に上昇していますが、これはその時間だけ、1時間ほど薪ストーブをたいた影響です。特に目的はなく、薪の火を見たかった、という感情的な動機ですが、比較的素直に床下温度に反映されたので、少し驚きました。室温への影響はほぼなく、ストーブが直接部屋の空気を温めたため、それがダクトから回って床下の空気温度を上昇させたものの、1時間程度では、部屋全体の温度への影響はなかったと考えられます。OMの家は床下に大きな蓄熱容量を持っていますので、一時的な熱エネルギーの発生では逆に効果はないためです。
考察
OMの家での冬の1日をデータで見てみました。冬といってもよく晴れた日であれば、集熱パネルの温度(棟温)は80℃近くまで上昇し、人間にとって快適な温度(20℃~25℃)との間に大きな温度差を提供できます。このためたとえ熱交換の効率がそれほど良くなくても、十分な暖気を供給できるといえます。また、床下に大きな熱容量を抱え、ここに蓄熱することで、もっとも冷え込む明け方まで、室温を保持できる機能があります。太陽エネルギーを輻射熱として収集し、ハイテク機器に頼ることなく、上手に生活に必要な熱を供給できる面白い仕組みだと思います。
本文中でも少し述べましたが、OMソーラーにはお湯を作る機能もあります。室温が設定まで上がると、余剰の熱エネルギーはお湯のほうに回される仕組みとなっております。今回は触れませんでしたが、当然お湯のほうにも熱はまわっています。しかしながら、冬の短い日照ではお湯の温度は十分上がりきらず、35℃くらいまでしかあがりませんでした。これでは風呂などにはそのままでは使えず、やはりボイラーの助けを借りないといけない状況ではあります。ただし、通常の冬の水道水の温度は相当低く、生暖かい程度のでお湯ではあっても洗い物などには利用できるし、沸かすにしてもその分の燃料節約にはなっています。
まとめ
ここまで見ていただき、ありがとうございました。OMソーラーは冬であってもよく晴れていれば、室温を快適に維持する機能は十分あります。ただし、風呂などに使う熱量までは供給できていませんでしたし、当然ですが、雪でも降ればほぼ機能しません。この辺は太陽だのみの自然エネルギー利用の限界でもあるでしょう。次回は夏の一日をやはりデータで見てみたいと思います。基本的に我が家にはクーラーはありません。場所的には東京よりは涼しいとは言え、やはり夏の日中は相当の暑さになります。その中でこのOMの仕組みがどう機能するか、次回もデータで見てみたいと思います。ぜひ見てみてください。
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