最強の仕事術 ーその最強の活用術1ー

人材育成

この記事では筆者の友人が今年始めに出版した本(最強の仕事術 山葉隆久著)の紹介をします。ポイントは、企業でのマネージャークラスの方が、部下の育成の一助としてのこの本を教科書のように活用してはどうか、というものです。企業のマネージャーであれば、人を動かすことの難しさは実感されている方が多いのではないでしょうか。正式なマネージャーでなくても、同様の立場にあって人材育成に頭を悩ませている方も多いかと思います。ぜひこの記事を読んでみて、本も購入して実践されることをお勧めします。

この本の特徴

この本の主題は「どこでも求められる人になるには」です。それは著者が体験された”想定外”の事態にどう対応すべきか、という課題から導きだされたものです。特に最近では先の見えない時代ですので、誰もが将来には漠然とした不安を抱えています。そんな中ですべての心配ごとをあげつらって、それぞれ具体的な対応をしていたらどうでしょうか。多分1ミリも動けないことになってしまうでしょう。ではどうするか。著者の答えが冒頭にあげた「どこでも求められる人」になることなのです。起きるかどうかわからない事にエネルギーを費やすよりは、自分を変えていくことで”想定外”に対応できる人間になり、この不安に満ちた世の中を生き抜いていこう、という考え方です。対象読者は主として企業に勤務する中高年のように見えますが、それはその年代が”想定外”の外乱を受けやすいからだ、と私は思います。ですので、この本の活用として若年層~中堅層も対象にした活用も有効だと思っています。

私がこの本を推す理由

実践の書、スキルの言語化の本であること

私がこの本を推す理由は、この本に書かれていることが極めて実践的であるからです。著者に言わせると”経験したことを語っている”なのですが、それが著者と直接対話をしているような感じがするからともいえます。「どこでも求められる人」に必要なのは「どこでも求められるスキル」です。厚生労働省では「ポータブルスキル」と呼ばれる考え方を提唱しています。詳細は厚生労働省のホームページを確認ください。「ポータブルスキル」については詳細は別途考察したいと思います。ここで言われている「仕事のしかた」や「人との接し方」などを、ある人間について分析や判定をしてもそれを育成していくことにはなりません。「どこでも求められるスキル」を育成することは分類することではないのです。本当の力を伝授していくには、多くの場合、マンツーマンのような”非言語”のコミュニケーションが必要だと思います。著者は本という言語的なコミュニケーションを使って体験を通してしか得られないスキルをうまく表していると思います。ここが本書の面白い点だと私は思います。

日常行動の基本を説いている

一つの例として、実践的な指摘を取り上げてみます。他部門に依頼したいことがある場合の心がまえを述べている部分です。「・・・その作業の背景と目的とを説明し、さらに、当面の目標も口頭で説明して共有しています。・・・メールだけで済ますことは決してしません。口頭で相手の疑問や不安に答えながら説明する姿勢を通します。もう一つは、お願いすることは、大抵、自分の不得意なことであったり、専門でないことです。その事実を相手に正直に伝えています。つまり、虚勢を張らないということです。・・・この巻き込み方は、リーダーや管理職こそ身に付けていなくてはいけないスキルです。」(p123)いかがでしょうか。高度な理論ではないかもしれませんが、シンプルで、実践に裏打ちされた貴重な提言ではないかと思います。

どこでも求められるスキルをわかりやすく整理

この本では前述の「どこでも求められるスキル」と「どこでも求められる人」を3つのスキルと7つのルールにまとめています。前半の「どこでも求められるスキル」は生産性を高めるためのスキルという観点でまとめられており、非常に実践的です。生産性というと現場での作業のようにも聞こえますが、ここではより広い意味で使われており、開発や設計、管理や会計、企業統制や企画などの仕事としてみても参考になるものです。私が好きなのは「どうにもならないことに悩まない」というくだりです。個人的な経験ですが、生産性が低い仕事を見ていると、半分以上はここで引っ掛かっているようにも見えます。また、後半の7つのルールはスキルを獲得する上での心構えのようなもので、これも極めて実践的な内容です。この中で一つ私が注目しているのが「いざというときに頼りになる人を増やす。肝はギブ&ギブ」という一節です。アダム・グラントという人の著書でGIVE&TAKE(楠木 建 監訳 三笠書房)という本がありますが、それにも通じるものがあります。仕事の結果は交換条件で得られるものではなく与えられるものだ、という思想があるように思えます。

人材育成の教科書としての活用術

私がこの本を読んだときにちょうど若手の教育を役員から依頼されたことがありました。私は教育や人材育成には関心は高いほうでしたが、その効果や成果には、「これでいいのだろうか」といった疑問を常に感じていました。今回、たまたま依頼を受けた際に、ちょっとした閃きでこの本を人材育成の教科書にしようと思いつきました。これは全くの思い付きです。本来ならこのような本はどちらかというと自己啓発の書であり、本人が読んで何かを吸収するものでしょう。あえて「教科書」にしようと思ったポイントは以下の2点になります。

OJT

実践での教育というと真っ先に来るのがOJTかと思います。経験ある先輩が業務のやり方だけでなく、仕事の心がまえや自己啓発、他の同僚や関係する人たちとの接触のしかた、あるいはちょっとした交渉術なども含めカバーし、指導育成するものです。これはきわめて実践的である反面、すべてがTPOに応じたその場限りのコメントの連続です。あえて欠点を言えば、それらは整合性がなかったり、忘れてしまって後から思い出せないなど、後からの振り返りについてはあまり優れているとは言えないと思います。せいぜい被教育者のほうで、メモを取る程度ですが、私の場合もそうですが、後からメモを見ても何のことだかわからない場合も往々にしてあります。人対人の教育なので、非言語コミュニケーションの要素が活用され、その面ではよいのですが、限界もあるものと思います。

言語化され、一貫した参考書としての活用

OJT教育の実際は、指導、育成のタイミングは極めてランダムで、その場その場で適格な指導が必要でしょう。多くのすぐれたビジネススキルを持つ方々はそれを自身の経験値の中で実践しているはずです。しかし、そういう対機説法のようなやり方は相手の心に伝えることには効果があっても、客観的な整合性は乏しくなります。私はこの本が、そのような場面に応じた大切なスキルをうまく整理したものだと思うのです。私はあまりいわゆるビジネス書を読んでいるほうではありませんが、本書のような実践を主眼としたものは経験値を伝える際の参考書としてはよいのではないかと思っています。

外部講習などの場合

教育手段として外部講習という方法もあると思います。外部といっても、必ずしも社外ばかりとは限らず、人事部門などが社外講師を招いて社員教育を行う場合なども含みます。企業に勤めている方なら多くの方は定期・不定期にそのような機会を会社が用意したり、あるいは自分で自主的に機会を探して参加する場合もあると思います。ただ、私の見た範囲では、それらは専門スキル、あるいはそれに近いものが多いように思います。ポータブルスキルのような「どこでも求められるスキル」は内容が一般的なものになりすぎて、今度は現実への適用が難しいという問題があるのではないでしょうか。講習で優秀な講師(陣)に当たれば、その時は成長した気分になれるのですが、教材や方法論は一般的なものであり、自分の現場には直接は応用できない場合も多いと思います。戻ってきて、何とか学んだことを応用しようと思ってもうまくいかず、次第に講習の時に高揚感も薄れ、日々の業務に埋没する、そしてすべては元通りに、というパターンも(少なくとも自分の場合)多いように思います。

人材育成には”非言語”コミュニケーションが大事だが・・

私は人材育成にとって重要な要素は言語化され、整理された知識と、非言語コミュニケーションによる意識が大切だと思います。言語化された知識をおろそかにすると、発展性がなく、非言語コミュニケーションに基づく意識が充実していないと現実性がありません。将来はAIなどの発達で、こういった分野も人が介在することなく、「どこでも求められるスキル」が養えるのかもしれませんが、現段階では後者は人対人によって養成される部分が大きいのではないかと思います。いわゆる「背中を見て育つ」的な感覚と理解してますが、困ったことに育成する側にも幾多の欠点があり、十全ではないことです。

最強の仕事術ーその最強の活用術

私の提案というかトライはこの本を前述の非言語コミュニケーションのガイドブックとして位置づけ、教育側と被教育側が内容を共有することで、非言語ならではの固有の問題のいくつかを克服し、「生産性の高い」教育をできないか、ということです。もちろんこれからの取り組みであるし、まだ思い付きの部分も多いものです。私の人材育成もまじめに取り組んできているつもりではありますが、統一的なやり方があったわけでなく、悪く言うと行き当たりばったりでした。ある人にはあるポイントを熱心に教えていながら、他の人に対してはそこが抜けていたりとか。。しかし、本書の著者の言うように何事も生産性を高めることが重要なスキルであるならば、やはり教育や指導にも生産性という考え方はあるのでしょう。人材育成では何が「生産性」であり、どうすればそれを高められるのでしょうか。できればその結果を発信していきたいと思います。皆様のご意見、ご感想などもよろしければお寄せいただきたいと思います。

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